正しく使えてる?『融資』と『投資』の違いは?わかりやすく解説!

正しく使えてる?『融資』と『投資』の違いは?わかりやすく解説! コラム

お金を使って資産を稼ぐ方法には、融資と投資の方法の二つがありますが、融資と投資の具体的な違いは一般人の間では実はあまり良く理解されていないのが現状です。どちらも資金調達の方法ではありますが、その中身は別物です。本稿では、定義・リターンの形・倒産時の順位・税務や会計の扱い・使い分けの考え方まで、融資と投資の違いについてビジネスと個人の両面からわかりやすく整理します。

融資と投資の違いについて

融資と投資の根本的な違いについては、基本的には融資は返す前提のお金であり、投資は成果を分け合うお金として認識されています。これら二つの金銭的なやり取りは契約、リターン、リスクの受け持ち方が根本から違います。そのため混同してしまうと、返済不能や想定外の希薄化など痛いミスに直結します。具体的には投資に関しては、元本割れが主なリスクとなり、融資については、債務の不履行などがリスクの要因として挙げられます。

融資とは?

融資は、金融機関や個人が元本返済に加えて利息を条件に資金を貸し付ける取引で、契約には返済スケジュール、金利(固定・変動)、期限の利益、資金使途、財務制限条項(コベナンツ:DSCR・D/E・純資産維持など)が明記されます。違反時は期限の利益喪失や条件変更、担保実行・回収に移行。リボルビング型(運転資金向け)とタームローン型(設備・M&A向け)があり、担保(不動産・売掛債権・在庫)や保証人が付くことも一般的です。金利は信用力や担保の質、返済期間で決まり、コミットメントラインや早期返済条項(ボラティリティ高止まり時の繰上げ弁済)を組み込むケースもあります。

投資とは?

投資は、原則として返済期限を設けず、出資先の価値創造に連動してリターンを分け合う資金の出し方です。株式や投資信託、ベンチャー投資、優先株や転換社債など形態は多様ですが、共通する本質は損失を受け入れる代わりに上振れを享受する点にあります。出資者は配当やキャピタルゲインを狙う一方、業績悪化や希薄化で元本割れもあり得ます。企業から見ると増資で得た資金は自己資本に積み上がり、返済義務はない反面、株主への説明責任、配当政策、情報開示、場合によっては取締役選任権や清算優先権などガバナンス上の約束事に応える必要が生じます。また投資の中でもETF 投資信託 違いなどのように投資の範囲の中でもいろいろな違いがあることも留意しましょう。

収益の得方の違い

融資と投資の違いにおけるメインとしてリターン設計の違いが本質的だといえます。融資は契約で金利・手数料・返済期間が固定(または変動幅が規定)され、元本が返り続ける限り収益は予見可能。上振れは限定される一方、キャッシュフローは安定します。対して投資は、配当と値上がり益(キャピタルゲイン)が柱となります。業績・市場評価・希薄化の影響を受け、無限大の上振れも元本割れもあり得ます。赤字期は配当ゼロも普通。そのため投資の場合には融資とは異なり、マイナスになる場合も大いにあり得ます。上振れん分の恩恵とリターンがない場合のリスクを十分に考慮したうえで判断する必要があります。

倒産時の対応の違い

倒産・清算局面では支払われる順番が融資と投資の違いの中でも大きな要素の一つです。まず担保付債権(抵当・譲渡担保等)や労働債権・租税債権が優先し、次に一般の無担保債権、最後尾が株主(普通株)の残余財産請求権です。ゆえに融資は、担保や保証、弁済順位で回収確度が高い一方、上振れは限定的だといえます。そのため安定性という点では融資の方が有利であるといえるでしょう。普通株の投資は、価値がゼロになるリスクがありますが、平常時は議決権や配当、値上がりの利益を狙えます。

会計処理と税務の違い

会計・税務の違いも融資と投資の違いの一つです。融資は負債計上で、利息は原則損金(税前費用)となり節税効果があります。元本返済はPLに影響せず、レバレッジでROEが動きやすい一方で、投資(増資)は資本計上で返済不要だが、配当は原則損金不算入で、株数増で希薄化が生じます。IFRS/日本基準では、優先株や転換社債などは条項次第で金融負債か資本に判定され、複合商品は負債・資本に分解計上。この区分がWACCやROE/ROICの水準を左右します。税務では支払配当の損金算入不可、受取配当は益金不算入の適用可否が論点です。

個人における使い分け

個人はまず自宅・教育など確実に返す前提の支出は融資で賄い、固定/変動の金利リスクや返済比率(手取りの25〜30%目安)を管理します。また急資金は生活費3〜6か月分を現金で確保し、それを超える余剰だけを投資へ回します。投資は当面使わない長期資金で、積立(時間分散)と低コスト商品を基本に、株式・債券・現金の比率を年齢や目標で設計。短期用途の資金は値動き資産に入れず、クレカリボや高金利借入は原則回避するようにしましょう。繰上げ返済と投資の優先度は、借入金利と期待リターン・流動性で比較し、税制優遇(NISA・iDeCo等)を先に使うのも一つの手です。

よくある誤用

資金調達で頻発する誤解は、「投資ならいずれ返すべき」、「融資なら成長の果実を分け合える」といった逆転思考です。投資は返済義務がなく、成果連動で上振れも下振れも受け入れる資金という認識が一般的です。融資は元本返済+利息が上限の固定収益で、株主のような超過リターンは原則ありません。迷ったら判断フローで整えるようにしましょう。具体的には、目的は運転資金か成長投資か、返済原資(キャッシュフロー)の確度が高いか、倒産時の弁済順位と担保の有無、希薄化や議決権の許容度、利息損金・配当不算入など税務効果が判断基準になります。

まとめ

融資は「返すお金」、投資は「成果を分け合うお金」として認識することで、融資と投資の違いを理解することができます。融資は利息収入が上限で弁済順位が高く、負債計上と利息の損金算入で安定性に優れます。投資は返済不要で上振れ余地が大きい一方、希薄化や元本毀損のリスクを負い、資本計上で配当は損金不算入に相当します。企業は目的別に負債と資本をブレンドしWACCを下げる、個人は用途と期限で財布を分け長期余剰だけを投資へ回すのが一般的です。基本的に迷ったら「返済義務の有無・倒産時順位・税務効果」で判断するようにしましょう。