意外と知らない!『影』と『陰』の意味の違いと使い分け例

意味の違い

『影』と『陰』は、どちらも「かげ」と読む言葉です。どちらも暗いイメージは同じですが、実はちゃんと意味が違っていることをご存知ですか?ここでは『影』と『陰』の意味の違いと、使い分けについて説明してみたいと思います。

『影』

『影』というのは、光に遮られてできる暗い部分そのもののことを指します。光に当たってできるあの、黒い部分のことですね。一般的に「かげ」という場合には、大体はこちらを指すと思います。

ここで大事なのは、『影』には必ず、月や太陽、電灯などの、対となる光があるということです。この漢字で「かげ」と読むときには、光源がどこかにあるということになるわけです。また、光に遮られた黒い部分ということは、具体的に形状があることもポイントの一つです。あれが「かげ」だ!と、指をさせる場合はこちらの漢字ということになりますね。

実はこの言葉は、昔は月や星の光を指す言葉だったそうです。それがだんだんと池などに反射する光を意味するようになり、次第に光に遮られた黒い部分のことをそう呼ぶようになったとか。今でも月なんかにはその意味で使いますよね。

ちなみにほかの意味には、姿そのものや、身代わりを指す場合もあります。いずれにせよ大事なのは、この漢字で書く「かげ」には、必ず形があるということでしょう。暗い部分というよりも、黒い部分が、こちらの『影』と考えると分かりやすいかもしれません。

対義語は『光』か、『形』となります。

『陰』

『影』が光に遮られてできる黒い部分ならば、こちらは光のあたっていない「暗いところ」のことになります。

『影』のように、光を遮って地面にできた黒い部分ではなく、光が差し込んできていない暗い空間がこちらの「陰」ということです。『影』には「反対側」に必ず光がありますが、こちらの漢字ですと、対となる光がないこともあります。

『影』と聞くと、確かに暗い部分を思い浮かべますが、その実、『影』には必ず光もイメージされています。「光ないところにかげはなし」ですね。対してこちらの『陰』は、そのまま「光がないところ」です。つまりは、「光ないところはかげである」というわけです。
なんだかややこしいですね。

では、この「かげ」とは暗がりのことなのでしょうか。それも大きく間違いではないのですが、実はちょっとだけ意味が違います。『陰』とは、何かから「隠れた」暗いところのことを言います。ですから、対象は光だけとは限らないのです。風雨や人目から隠れている場合にも、この「かげ」は使えます。かげ口なんかが、まさにそれですね。そのため、目立たないことそのものという意味も、この漢字には含まれています。

対義語は、『日向』や『陽』となります。

『影』と『陰』の使い分け例

『影』も『陰』の違いは、具体的な例を考えると分かりやすいです。

『ビルのかげ』

この「かげ」が『影』の場合は、そのままビルが太陽の光を遮ってできた、あの黒い部分のことになります。きっと長方形の形をしているでしょうね。対して『陰』の場合は、ビルによって光が遮られた、暗い空間そのもののこととなります。

ビルにかげができる」なら『影』、「ビルのかげになる」なら『陰』です。

『日かげ』

『日陰』であるならば、日光の当たらない空間全般のことになります。「暑いので、日陰に入る」なんて言い方はよくありますね。『日影』であるなら、日光が何かを遮った黒い部分のことになります。あまりこちらの字を使うことはないかもしれません。

『影』と『陰』の両方の漢字がどんな風に使われているのかを見ても、分かりやすいでしょう。『影』を使うのは、投影・影響・影武者など、基本的に何かの「対象物」として『影』が使われています。しかし『陰』は、陰険・陰鬱・山陰など、とにかく暗いというイメージ、目立たない印象が強いですね。

まとめ

『影』も『陰』も、結局はどちらも光のあたらない暗い部分を指しているうえに、読みが全く同じなため、ややこしく感じてしまうこともあるかもしれません。ですが意味の違いを理解してしまえば、実はかなり違った言葉なのだと分かります。それだけに、間違えるとちょっと恥ずかしいかもしれませんので、使うときには「かげ」でしっかり確認してからにしましょう。