ニュースでよく耳にするのが『懲役』と『禁固』です。どちらも犯罪を犯した人が裁判によって裁かれ、刑務所の中でその罪を償うことだということはよく知られていますが、この二つの違いはどのようになっているのでしょうか。
『懲役』
- 意味 :罪人を刑務所内に拘置し、労役に服させること。
- 使い方:懲役10年の刑を科された男が刑務所内で働いている。
『懲役』とは罪人を刑務所内で所定の作業をさせることをいいます。
刑務所内で科される強制労働のことを刑務作業と呼び、金属製品や木工の加工、靴や衣類の製作、刑事施設内の炊事、洗濯、清掃などがあります。作業に従事した受刑者には、1人1ヶ月当たり平均4,700円ほどの作業報奨金が支払われます。主に集団で行う作業ですが、集団生活を送ることが困難だと判断されたり、要注意の被収容者と判断されたりして、独房に入れられている人は仕事場には行かず、独房内でシール貼りなどの単独作業を行います。
懲役に服している受刑者の多くが破廉恥罪と呼ばれる罪を犯した人たちです。殺人罪・窃盗罪・放火罪など、法律に違反するばかりでなく、道徳的にも許されない刑が破廉恥罪にあたります。刑務所内の工場等で「強制的」に働かされるのが特徴となっています。また刑務所内では独房の場合を除き基本的に集団生活を送ることになっています。
『禁固』
- 意味 :刑罰の一種で、監獄には入れるが、労働はさせずに閉じ込めておくこと。
- 使い方:禁固刑に服している男は今日も狭い部屋の中で一日を終えた。
『禁固』というと主として、監獄に入れるものの労働はさせないことをいいます。『禁錮』という漢字を用いられることもあります。懲役刑とは異なり、刑務作業に服すことができないのが特徴です。
懲役刑よりも軽い刑だと考えられており、日本の法律では同じ刑期(2年等)であれば懲役刑の方が重く、禁錮刑の期間が懲役刑の期間の2倍を越える場合では禁錮刑の方を重いものとしています。しかし実際には人とのつながりを絶たれ、孤独な生活を送ることを強いられるとても苦しい刑です。その苦しさに耐えられず、被収容者みずから刑務作業がしたいと申し出ることも少なくありません。
禁固刑は主に非破廉恥罪と呼ばれる罪を犯した人たちが受ける刑です。これは、「自分が正しい」と思って犯した政治的な犯罪や意図せず起きた「過失」などの罪のことをいいます。強制労働が「できない」ことが特徴です。
『懲役』と『禁固』の使い分け例
『懲役』と『禁固』の違いは、「刑務作業があるかないか」「犯した罪は道徳的に反するものか」という点に着目しておくと良いでしょう。
「懲役3年」という言葉が使われた場合、その人は道徳的に反する罪を犯したために刑務所で強制労働させられるという意味を表します。それに対して「禁固3年」という言葉が使われた場合、その人は自分の信念に基づき犯罪を行ったか、もしくは意図せずに罪を犯してしまい、狭い部屋で3年間罪を償わなければならない、という意味です。
ただし禁固の場合は、「孤独に耐えられずに刑務作業を申し出る」可能性も頭に入れておくべきです。実際に大半の被収容者は刑務作業を請願します。
また、「禁固刑だが請願して刑務作業をさせてもらっている」という表現は正しいものの「懲役刑だが請願して刑務作業を免除してもらっている」という表現は間違っています。懲役刑に付随する刑務作業は強制的なものだからです。また一般的に禁固刑よりも懲役刑のほうが刑としては重く、悪いことをしたのだと考えて良いでしょう。
まとめ
ニュースなどでよく耳にする『懲役』と『禁固』は刑務所に収容されるというでは共通していることから紛らわしいと感じてしまいがちです。次のように区別するとよいでしょう。
- 『懲役』:道徳的に反する犯罪を行い、強制労働に服す
- 『禁固』:行った犯罪は道徳的に反するものではないが、刑務所の一室に閉じ込められる。
日頃のニュースから以上の言葉を耳にした際にどのように罪を償うのか想像することが大切です。