多機能な冷蔵庫の温度調節を見てみたり、食品などの保存方法を確認していたりすると出てくる言葉に『氷温』と『冷凍』があります。どちらも凍るほどに低い温度とはわかるでしょう。厳密にはどのような違いがあるのでしょうか。
『氷温』
- 意味:あるものが凍り始めるまでの温度で0度以下の温度領域
- 使い方:魚の鮮度を保つために氷温保存をする。
『氷温』は「あるものが凍り始めるよりも高い温度で、かつ水が凍り始めるよりも低い温度」を示します。
平たく言えば、水は凍る可能性があっても対象になるものが凍らない範囲でギリギリまで低くした温度と言うことができるでしょう。具体的な温度領域は対象になるものによって異なりますが、一般的には0度以下、マイナス5度以上の温度領域です。
様々なものを同じ場所で管理する場合にはマイナス1度に保持するということが多いでしょう。水は純粋な場合には0度で凍り始める性質があります。しかし、実際には水に塩分などが溶けていることにより凝固点降下が起こるため、0度では凍り始めないことが多いのが事実です。
生鮮食品を代表とする食材の鮮度を保つためには低温を維持することが大切ですが、その際に凍らせてしまうと食材として台無しになってしまう場合もあります。一度凍ってしまうと細胞が壊れてしまいやすいことが知られており、それによって旨みが抜けたり食感が失われたりしてしまうことがよくあるのです。
特によく行われるのが野菜や肉類、魚介類の保存目的での利用です。食品が凍結してしまわないギリギリの温度で管理をすることですぐに悪くなってしまう生鮮食品であっても品質を保持することができます。冷蔵よりも長持ちさせられて、冷凍よりも質を重視して保存することができるのが氷温保存です。温度領域が極めてシビアになるため、厳密な温度管理が必要になります。
『冷凍』
- 意味:あるものを凍結させること
- 使い方:食品を冷凍して長期保存する。
『冷凍』は「凍る温度以下にして凍結させること」を指します。
温度領域としては氷温よりもずっと低くするのが一般的になっていて、家庭用冷蔵庫であってもマイナス18度以下に設定されているのが通常です。
食品について考えると、凍結させてしまうことによって腐敗が進行しにくくなり、長期間の保存ができるようになります。腐敗が進行してしまう原因として大きいのは腐敗をもたらす菌の増殖です。ほとんどの菌は低温にすることで活動が遅くなり、マイナス15度以下になるとほぼ活動を停止します。そのため、家庭用冷蔵庫では扉の開け閉めをしてもマイナス15度以下を保てるように、マイナス18度以下が目安として設計されているのです。
温度は低いほど保存期間を延ばすことができますが、凍っているかどうかという時点でも大きな違いが生じるため、凍る温度以下にすることが保存においては重要です。ただし、凍結は熱を発生する過程になりますので、マイナス1度で凍るものをマイナス1度の環境においてもなかなか凍りません。厚みのあるものを中心部までしっかりと短時間で凍らせるためには十分に低い温度に保つことが欠かせないというのも理由になって、家庭用冷蔵庫であってもマイナス18度以下に維持するようになっています。
より低温での貯蔵を必要とする場合や急速に凍結させたい場合にはより低い温度を利用することも可能です。特に食品の保存の文脈では速やかに凍らせつつ、菌の増殖を防ぐ目的があるのが冷凍となっています。
まとめ
食品の保存でいずれも低い温度を意味する『氷温』と『冷凍』は温度領域も目的も違います。鮮度を重視して凍らないギリギリの温度を保つのが氷温であり、保存期間を重視してしっかりと凍結させるのが冷凍という形で区別しておきましょう。