同じように感じてしまいやすい日本語の中に『能率』と『効率』という言葉があります。この言葉は、実際に使い分けている場面を見ていても、違いが理解できないことも多いのではないでしょうか?
今回はこの『能率』と『効率』の意味と使い分けに関して説明していきます。
『能率』
- 意味:一定の期間において絶対量としてどれだけの仕事をこなすことが出来るかをはかる割合
- 使い方:仕事の能率が良い、能率の低い工場
この言葉は、一定の期間を定めたうえでその期間中にどれくらいの仕事をこなすことが出来るかの割合として用いられます。
例えば、工場Aは1か月の間に100の仕事量をこなすことが出来、工場Bは同じく1か月の間に200の仕事量をこなすことが出来る場合は、工場Bが能率の良い工場だということが出来ます。この工場の例のように一定期間にかかる費用や労働力などを考えることはせずに、絶対的にこなせた仕事量の多さを図るために用いられるのがこの言葉の特徴です。
この言葉は後ろに「給」をつけて歩合給に近い給与体制を表すこともあります。歩合給との違いは、歩合給は主に販売実績に対して使われる言葉であるのに対して、こちらは販売以外の実績、研究などの実績に関しても用いられる言葉です。また、後ろに「的」とつけることによって形容的な言い回しで利用されることの多い言葉でもあります。
『効率』
- 意味:費用などの投資物に対してあげられる効果、成果の割合を表す
- 使い方:効率の良い生産システム、効率的な投資
この言葉は投資物に対してどれだけの効果、成果を上げることが出来るかの割合を表すものです。
例えば生産システムAは10キロの小麦粉から100個のパンを作り上げることが出来ます。対して生産システムBは同じく10キロの小麦粉から200個のパンを作り上げることが出来ます。その場合は、投資物である同じ量の小麦粉10キロから、より多くのパンを作り上げることが出来る、生産システムBのほうが効率の良い生産システムだということになります。
また、この言葉は目に見える物質だけを投資物としてとらえるのではなく、時間という目で見ることが出来ないものに対しても利用されます。ビジネスの中では費用に対しての効果測定が行われることが多くあります。正しく使われる場面は、生産性を確認するときに、一定の成果に対して消費した投資物をどれだけ使ったかを確認することによって、色々な視点から相対的な効果を確認する場合に使われます。
『能率』と『効率』の使い分け例
『能率』と『効率』の正しい使い方は説明しましたので、次は実際に使い分けるときの具体的な例を出して説明していきます。
『能率が良い生産システム』と『効率が良い生産システム』
10キロの小麦粉から1日で100個のパンを作り出すことが出来る生産システムAと、20キロの小麦粉から1日で150個のパンを作り出せる、生産システムBがあるとします。この場合は同じ時間で150個のパンを作ることが出来る生産システムBは生産システムAと比べて『能率の良い生産システム』ということが出来ます。
そして、小麦粉の量を投資物として考えて同じ10キロにして比較すると生産システムAは100個、生産システムBは75個のパンを作ることが出来るため、『効率が良い生産システム』は生産システムAだということになります。
このように、『能率』は良くても『効率』としては悪い場合がありますので、『能率』と『効率』という言葉を使い分けるときには、何を比較の条件として設定しているのかを確認したうえで使用していく必要があります。
まとめ
以上、今回は『能率』と『効率』の違いについて説明してみました。
- 『能率』・・・一定期間でどれだけの生産量があるかを図る
- 『効率』・・・一定の投資物でどれだけの成果を上げることが出来るか図る
投資物が時間のみの場合はどちらも同じ意味となりますが、比較条件に時間以外が加わる場合は注意して使い分けていきましょう。