ビジネスシーンでよく耳にする「昇進」と「昇格」があります。どちらも今よりも「社内での立場が上がること」を指す言葉ですが、実際には使われる場面や意味には微妙な違いがあります。上司の昇進や昇格の通知を聞い、お祝いのメッセージを送りたいとき、二つの言葉の意味の違いを知らずに間違って使用してしまうと、誤解を招いてしまうことがあります。
この記事では、「昇進」と「昇格」の違いを整理し、実際の使い分け例などをわかりやすく解説します。
このページの目次
昇進と昇格の意味の違いは?
「昇進」と「昇格」は、どちらも社内での地位向上を意味する点では共通していますが、対象とする要素が異なります。
「昇進」は部長・課長・係長といった「役職の階段を上がる」ことを表すため、会社内での組織的な位置付けが変わる点に特徴があります。例えば課長から部長になるなど、明確な肩書きの変更が伴います。
一方で、「昇格」は人事制度上の等級や給与のグレードが変わることを意味し、役職が変わらなくても起こりえます。
例えば、「一般職A から一般職B」に上がったり、スキル評価で「等級4から等級5」へアップグレードする場合などが該当します。肩書き自体は変わらないため、同僚などからは分かりにくい昇格が多いです。
意味の違いの詳細
| 項目 | 昇進 | 昇格 |
| 意味 | 役職や職位が上がること | 社内の人事等級が上がること |
| 例 | 一般職から主任、係長から課長など | 等級や評価が上がるなど |
| 給与 | 昇給幅が大きくなる | スキルや等級に基づく |
多くの場合、昇進と昇格は同時に行われますが、別個に行われることもあります。
昇進は肩書きのランクアップ、昇格は等級のランクアップと覚えておくと混同しにくくなります。
『昇進』と『昇格』の使い分け例
「昇進」と「昇格」の使い分けは、人事制度によって状況が異なります。
以下に、一般的な使い分けの例を以下に示します。
「昇進」の使い分け例
「昇進」は、主に役職や肩書が上がったことを社内外に伝える際に使われます。
例文:
- 佐藤さんは来月から課長に昇進します。
- 業績が評価され、営業チームのリーダーから課長代理へ昇進しました。
- 人事発表で、田中部長が取締役に昇進することが決まりました。
- 彼は入社5年でマネージャーに昇進するスピード昇進を果たした。
「昇格」の使い分け例
「昇格」は、社内の等級(ランク)が上がったことを指し、通常は社内でのみ共有される情報です。
例文:
- 半期評価の結果、等級4から等級5へ昇格しました。
- 主任のままですが、評価点が高く給与グレードが昇格しました。
- 資格取得が認められ、スキル基準の見直しで上位グレードに昇格します。
- 経験年数と実績により、一般職AからBへ昇格する人事が発表された。
昇進と昇格が同時に起こる場合の例
多くの企業では、役職が上がる(昇進)と同時に等級も上がる(昇格)ため、どちらの言葉も使われます。
- 佐藤主任への昇進(昇格)に伴い、給与規定の変更が行われます。
- 課長への昇進・昇格試験を受ける。
まとめると、対外的には「昇進」を、社内の評価制度や給与体系について話す際は「昇格」を使うのが一般的です。
昇進の主な評価基準
昇進の基準は企業や組織によって異なりますが、一般的に、業績・能力・情意の3つの評価基準に基づいて多面的に判断されます。また、将来の役職に見合った「リーダーシップ」や「潜在能力」なども重視されます。
業績・成果(成績基準)
最も明確な基準の一つは、仕事でどれだけの成果を出したかです。
設定された目標やノルマに対して、達成してきた成果が評価されます。
さらに、担当業務における成果の高さや貢献度が考慮されます。特に、売上への影響や効率化など、具体的な数値で示せる成果は高く評価されます。
担当してきたプロジェクトを成功に導くことができたかどうかも重要な指標のひとつです。
能力・スキル(能力基準)
現在の業務遂行能力だけでなく、将来の役職に必要なスキルや潜在能力が評価されます。
複雑な課題を見つけ出し、解決策を導き出す問題解決能力や専門的な知識や技術などは、上位の役職ほど重要になります。
また管理職への昇進には、チームをまとめ、目標達成に導くリーダーシップやマネジメント力が不可欠です。
上司、同僚、部下と円滑な人間関係を築き、連携するためのコミュニケーション能力や交渉力も評価の一環です。
勤務態度・意欲(情意基準)
仕事に対する姿勢や責任感、倫理観なども重要な判断材料となります。
責任を持って業務を完遂する姿勢や、指示待ちではなく自発的に行動する意欲が評価されます。
さらに、チームワークを大切にし、周囲と協力して業務を進める姿勢や、会社の価値観や行動規範に沿った行動ができているかも判断されます。
組織全体の目標を理解し、新しい知識やスキルを積極的に学び続ける姿勢や、変化への適応力が評価されます。
その他の判断要素
年功序列の要素が強い企業では、一定の勤続年数や経験が昇進の要件となる場合があります。また、日々の業務を通じての上司からの推薦や評価レポートも、昇進の重要な判断材料です。
昇進・昇格試験や面接を通じて、上位職への適性が確認されることもあります。
昇進・昇格が行われるタイミングは?
企業で長く働いていると、「昇進」と「昇格」が行われやすい時期も気になるポイントのひとつだと思います。企業によって制度はさまざまですが、一般的に昇進や昇格が行われやすいタイミングを整理すると次のようになります。
昇進や昇格の時期
昇進や時期で、もっとも多いのは「年度の切り替わり」や「半期の区切り」に合わせた人事異動の発表時です。4月(新年度)や10月(半期)に編成があることが多いです。
重要ポストの増設や組織変更に伴って昇進が行われるケースも多くあります。
例えば、新部署の立ち上げ、事業拡大、管理職の交代など社内での大幅な組織編成があったときに昇進が行われることがあります。
一方、昇格は入社してから半年や一年ごとの評価時期にセットで行われる事が一般的です。さらに、仕事のために新しく資格やスキルを取得した後に、その努力が認められて昇格されることがあります。
その他にも、時期に関係なく事業の特別な功績が認められたときに臨時昇進・昇格が行われる場合があります。
まとめ
「昇進」と「昇格」の違いは分かり辛いですが、それぞれ意味が異なり、称する状況や場面も変わります。
昇進は「役職のポジションのアップ」、昇格は「等級や評価のアップ」という意味の押さえ方をしておけば、メール・社内文書・面談などでも正確に表現ができます。
特に人事制度が細分化される現代では、言葉の使い分けがより重視される傾向にあります。
この記事を参考に、ビジネスの場でより適切な言葉遣いを意識してみてください。







