有名人の呼称として用いられる言葉に『芸能人』と『タレント』があります。どちらもマスメディアで見られることが多いのが特徴ですが、違いはあるのでしょうか。境界線がわかりづらくなってきているものの、両者は区別ができます。
『芸能人』
- 意味:芸能をすることを生業としている人。
- 使い方:あまり知られない芸能人として細々と活動する。
『芸能人』は「何らかの芸能を特技として発揮することで生業としている人」です。
もともとは芸能全般で能力を発揮している人が該当していました。音楽やファッション、伝統芸能などの様々な芸能の分野で活動することで収入を得て生計を立てている人を示しているのが原義です。しかし、現在では主にテレビなどのマスメディアを通して活動する人が該当するようになっています。その意味では『タレント』とほぼ同義になりますが、必ずしも高い人気を集めているとは限らないのが特徴です。
細々と活動を続けることによって名も知られずに収入を得て生活をしている人もいます。そのような人も含める言葉ですが、さらに別の意味を示す場合もあるので注意が必要です。マスメディアなどに登場しても専門外の仕事はしない人のことを示す言葉としても使用されています。もともとの意味合いから考えると自分の専門とする芸能に執着している点で『芸能人』として適切な用法です。
『タレント』
- 意味:特定の能力や技能を持ってマスメディアなどに出演することを生業としている人
- 使い方:有名なタレントになるための道のりは険しい。
『タレント』はもともと「秀でた能力」を意味するtalentという英語に由来している言葉で、「秀でた能力や技術を活用して生計を立てている人」というの原義になります。しかし、『芸能人』と同様に意味が変遷を遂げてきており、必ずしも秀でた能力がなくともマスメディアなどに出演することを生業としている人を全般的に指すようになっているのが現状です。
特に秀でた独自の能力を持っている場合もありますが、むしろそのような特徴的な点がなく、広くバラエティー番組などに出演して適宜能力を発揮しているという人が多くなっています。そして、何らかの秀でた能力が認められると、ミュージシャンや俳優などと言った別の呼び名に変わるのが一般的です。様々な場面に適応してどのようなマスメディアからの要望にも応えられるというのはそれだけでも十分に秀でた能力だから『タレント』と呼ぶという考え方もあります。
『芸能人』と『タレント』の使い分け例
『芸能人』と『タレント』の境界線は曖昧になっているため、厳密な使い分けをするのは簡単ではありません。
比較的区別がしやすい例として『音楽をする芸能人』と「音楽をするタレント」があります。
『芸能人』である場合には、音楽を披露することで生計を立てているという意味が基本です。音楽の能力を活用することでマスメディアにも出演して出演料を稼いでいるかもしれません。しかし、自前で公演を行って生活費を稼いでいる可能性もあります。
一方、『タレント』である場合には二つの解釈が生まれるので注意しましょう。原義に従って考えると音楽の秀でた能力を生かして様々な場面で披露をして生計を立てていると考えられます。しかし、現在用いられている意味になると状況が逆転し、音楽はあくまで一つの能力であって、それを使うかどうかにかかわらずマスメディアなどに出演することを通して生計を立てているという可能性があるのです。『タレント』を使用するときには特に秀でているときと、マスメディアに出て生計を立てているときがあるということになります。
まとめ
『芸能人』は芸能を生業とする人を指し、『タレント』はある特定の能力を使って生計を立てている人を指します。
しかし、どちらもマスメディアに出演する傾向が強まって境界線が曖昧になってきているのが現状です。生計を立てるのに芸能の能力を活用しているなら『芸能人』、活用していないなら『タレント』と考え、特に芸能の能力が秀でていて活用している場合にも『タレント』が使えると覚えておきましょう。