正しく使える?『留意』と『注意』の意味の違いと使い分け例

意味の違い

気をつけることを意味する表現としてよく用いられる『留意』と『注意』はしばしば混同されて使用されています。うまく使い分けをしないと意図が通じずにトラブルを生んでしまうリスクがあるため、違いを明確に把握しておくことが重要です。

『留意』

  • 意味:心に留めること。
  • 使い方:このような事例があることに留意しておいて下さい。

『留意』は「心に留める程度に気をつける」という意味があります。何かについて気をつけておかなければならないというときに、具体的な行動を伴わずに意識の上で気をつけるのが基本的な意味です。

気をつける程度としては弱いものの、いかなるときでも忘れてはならないという意味合いもあります。このとき限りで覚えておいて欲しいというときよりも、今後継続的にある程度の意識を持っておいて欲しいというときに用いられる表現です。

継続的に気をつける必要がある際に強制力があると負担になりかねません。そのことを意識して、その程度は低くても構わないという意味合いを込めて使用されることもよくあります。具体性が高い物事や個別的なものよりも抽象的な対象や幅広い事象を対象として用いられることが多いのも特徴です。

健康や生活習慣、時間などに対して気をつけるように促したいときに「留意して下さい」という形で表現されることが多いでしょう。

『注意』

  • 意味:意識を集中させて気をつけること。動作を伴って気をつけること。気をつけるように促すこと。
  • 使い方:失敗しないように十分に注意する。

『注意』は基本的には「気をつけること」を意味しますが、『留意』に比べると意識を集中させて十分に気をつけることを指します。

程度の差が両者の違いという理解しても支障はありません。ただし、集中して気をつけるという表現の延長線上として、ただ意識するだけでなく行動を伴うことがしばしばあるのも特徴です。

警戒するという言葉で置き換えることができる場合がよくあります。「エスカレーターでは足元にご注意下さい」というのはよく耳にするでしょう。ただ意識に留めているだけでなく、エスカレーターの段の動きをよく見て、タイミングを見計らって乗り降りするという動作が求められているのです。

一方、気をつけるように促すことに対しても用いられる表現です。忠告すると置き換えられる場合もあります。比較的幅広い用例があるのが特徴ですが、気をつける意識が強いという点は念頭に置いて使用することが大切です。

『留意』と『注意』の使い分け例

『留意』と『注意』の区別が問題になりやすいのは気をつける度合いが違うときです。『注意』でしか使えない「警戒」「忠告」の意味の場合には『留意』は使えないと覚えておけば問題ありません。

両者の使い分けをする例として典型的なのが「健康に留意する」「健康に注意する」の二つの表現です。「健康に留意する」の場合にはこれから健康に不安が生じてしまうことを懸念している状況や、病気になるような兆候が見られ始めたりしている状況で、悪化させないように普段から気をつけるようにするという程度のものになります。

しかし、「健康に注意する」という状況になるともっと積極的な行動をしなければならないでしょう。既に健康診断で何らかの異常が見つかってしまっていたり、すぐにでも状況が悪くなりそうな病気を抱えていたりして、食事や運動などに気を払って生活することが望ましい状況になっていることを連想させます。具体的な対処が必要か、気をつけていれば大丈夫かという点で大きな違いが生じる例として覚えておくと良い用例です。

まとめ

『留意』と『注意』は気をつける程度に違いがあります。ただ念頭に置いておけば良いのが『留意』なのに対して、行動を伴う必要が生じることが多く、しっかりと集中した意識を持たなければならないのが『注意』なのです。