同じような草を編んで作ったように見える日本の伝統的な履物には違う名前が付けられています。『草履(ぞうり)』『草鞋(わらじ)』『雪駄(せった)』を見た目で区別できるでしょうか。特徴的な点を押さえてはっきりと使い分けられるようにしましょう。
『草履(ぞうり)』
- 意味 :わらや竹皮、い草などを材料として作った平らな底に鼻緒を取り付けた履物。
- 使い方:ちょっと外の物置まで草履を履いて道具を取ってきました。
『草履』は「わらや竹皮、い草などで編んだ平らな靴底と鼻緒で作られた履物の一種」です。鼻緒部分が足を靴底に固定していて、かかとやつま先だけでなく全体が基本的に開いていて足を覆うものはありません。
足裏を守るための履物として利用するものと考えると良いでしょう。現代の靴に用いられる材料で作ったものであればサンダルに相当すると考えるとイメージが浮かびやすいかもしれません。現在制作されているものについてはビニールや革、布などが用いられていて、わらなどを使用していた伝統的なものとは異なりますが、広義では現代のものも含んで同じ名前で呼びます。
現代ではあまり伝統的な『草履』を履く機会がありませんが、冠婚葬祭などで和装をする際には履くことがあるでしょう。その際にはより高級なものとされている靴底を重ねて編んだものが用いられることが多くなります。
『草鞋(わらじ)』
- 意味 :わらや竹皮、い草などを材料として作った平らな底に長い緒を使って足首に巻きつけて履く履物。
- 使い方:これから長旅になるので新しい草履を確保しました。
『草鞋』は「草を編んで作った底に対して長い緒を使って足首を固定して履く履物の一種」です。長い緒はつま先の辺りに固定されていて、それをかえしと呼ばれる輪に通しながら足首にしっかりと巻いて固定し、足の後ろ側で縛ることで足に履物を密着させることができます。
脱ぎ履きには時間がかかりますが、足が靴と一体化することから長距離歩行がしやすいため、昔から距離を歩く旅に出るときや険しい道を歩く山歩きなどに利用されてきました。『草履』を長距離歩行用に改良したものと考えると良いでしょう。靴底が草で編まれているため、長距離を歩いて摩耗してしまいやすく、基本的には使い捨ての履物として用いられたものです。
現在では日常生活では用いられることはほとんどありません。しかし、山歩きや沢歩きなどの際に滑りにくさが着目されて用いられている場合があります。
『雪駄(せった)』
- 意味 :竹皮で作られた平らな底に皮を貼ってかかと部分に尻鉄を付けたものに鼻緒で取り付けた履物。
- 使い方:寒い雪の中ではありましたが雪駄を履いて井戸水を汲んできました。
『雪駄』は「竹皮で作られた草履の底に皮を貼ってかかと部分に尻鉄を付けたもの」です。竹皮の『草履』は竹皮を表と裏で合わせて作るのが基本となっていて、その作り方にも少しの違いがあります。間に挟む重ね芯がつま先側で1枚、かかと側で3枚以下のものが基本設計となっています。
最も特徴的なのは皮を貼って尻鉄を付けるということです。革を貼ることによって防水性が高まり、雪の上でも歩くことができるようになっています。また、雨や打ち水で濡れた上を歩いても足が濡れてしまうことがありません。
下駄も同様に雪の中を歩くことができますが、それに対して足が地面に密着することから滑りにくくて歩きやすいのが『雪駄』です。尻鉄がついていることによって歩く度にカチカチといった音がなるのも特徴的な点でしょう。茶道でよく用いられてきた履物です。
まとめ
同じように草を編んで作られている『草履』『草鞋』『雪駄』は元は『草履』と考えると良いでしょう。靴底に鼻緒を付けただけの『草履』を長距離歩行に適した形で長い緒を付けて固定して履けるようにしたのが『草鞋』、竹皮で作ったものを皮と尻鉄で防水性にしたものが『雪駄』です。