近年の歴史ブームで古墳や古城、古刹などを巡る人が増えています。
しかし、実際現地でキャプションなどを見てみると「遺跡」と表記されているものがあるのに対し、「史跡」と表記されているものもあることに気づきます。
同じような過去からの遺構なのに、双方の表記にはどのような違いがあるのでしょうか?
このページの目次
『遺跡(いせき)』
- 意味:過去に人類が様々な活動を営んだ痕跡を残すもの・建物・場所
- 使い方:貝塚は古代人の生活遺跡だ、旧校舎は戦前の教育遺跡だ
『遺跡』とは、人類の活動を示すもの・建物・場所などを指します。日常生活から歴史的事件まで、人類が積み重ねてきた事績の跡を幅広く網羅する言葉だととらえて良いでしょう。
主に考古学的見地から使用される言葉で、時代性は全く含まれません。従って、つい先日のことであろうともそこに時代的背景を読み取ることができるような痕跡であれば、それは『遺跡』であると認識されます。
具体的に、建造物については竪穴式住居や古墳といったものから古民家、更には巨大な団地なども日本の高度経済成長の一側面からとらえた場合は当時の時代を象徴する『遺跡』として価値が認められる場合があります。
このように時代的背景を伴っていれば含まれることがあります。
『史跡(しせき)』
- 意味:歴史的重要性により、文化財保護法などの法令に基づいて国や地方自治体から指定された遺跡
- 使い方:近所の古墳が考古学調査によって史跡に指定された、窯跡の史跡巡りをする
『史跡』とは、一般的に日本の文化財保護法によって規定される用語です。遺跡とされるものの中から特に歴史的・学術的価値が高いと認められ保護が必要なものに関して、国や地方自治体が指定を行ったものを指します。
文化財保護法によれば、文部科学大臣が指定できるとされています。国からの指定が漏れたものについては、地方自治体が独自の条例に基づいて指定する場合があります。
国が指定するものは「史跡」・「特別史跡」です。それに対して地方自治体が指定するものについては、ぞれの条例で呼称が違います。
主に「旧跡」「県指定名跡」「地域文化財」などの名称が使用されるのが一般的ですが、明確に区別するという観点から「遺跡」の名称を使用して指定を行っている所はほとんどありません。
『遺跡(いせき)』と『史跡(しせき)』の使い分けの例
『史跡』は『遺跡』に包含される言葉であるため、史跡を遺跡として紹介できても、遺跡を史跡として紹介することはできません。
そのため、現在日本で『遺跡』とされる遺構は46万件以上あるとされているのに対し、国が指定する『史跡』は1700件程度に留まります。将来的に史跡の数が増える可能性は高いですが、それでも遺跡の数を超えることはありえません。
『遺跡としての城』と『史跡としての城』
- 遺跡としての城・・・所有者や歴史的意義が不明な城郭
- 史跡としての城・・・所有者が明確化され、時代における役割が公的な認められた城郭
そこに建っているだけの城は単なる遺跡ですが、その歴史的意義が明らかになったことでそれが公的に認められた場合、その城は史跡になります。
『生活遺跡』と『生活史跡』
- 生活遺跡・・・人が生活していた痕跡が残る場所・もの
- 生活史跡・・・人が生活していた状況が歴史的に重要であると認定された場所・もの
人が生活していた痕跡ならば生活遺跡であり、そこに当時の状況を指し示す重要性が認められた場合、公的認定を経ることで生活史跡となります。
まとめ
以上、一般の人にはなかなか違いがわかりづらい『遺跡』と『史跡』について意味の違いと使用例を解説してきました。
- 『遺跡』・・・過去の人々の痕跡が残っているもの全般
- 『史跡』・・・遺跡の中から公的に歴史上価値が高いと認められたもの
このような違いがあるため遺跡は史跡よりも圧倒的に数が多く、日本の原始時代におけるゴミ集積場とされる貝塚の遺跡数だけでも、国が認める史跡全般の優に2倍を超えるとされています。
近年日本文化は広く世界に認められて尊重されるようになってきているため、歴史的教養は日本人として身につけておきたいものです。
その一環として、過去における日本人の営みを物語る『遺跡』と『史跡』を、その違いに即して適切に使い分けることができれば、日本の歴史や文化に詳しい人として一目置かれるようになれるかもしれませんよ。