手や胴、頭などをひとまとめにして表す言葉として”からだ”があります。これに漢字を当てるときには『体』と『身体』が一般的に用いられていますが、両者にはどのようなちがいがあるのでしょうか。細かな意味の違いを覚えておきましょう。
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『体』
- 意味:人や動物などの頭や胴、手足などを合わせたもの。
- 使い方:体は頭と胴に手足が生えてできているという考え方があります。
『体』は「生物の頭や胴、手足などの各部分を全て合わせたもの」です。
狭義には人や動物のように頭と胴、四肢を合わせたものという意味がありますが、厳密にはそれらの区別がないような魚や鳥、昆虫や植物などの全てを示すのにも用いることができます。哲学的な面から考えると物質と精神を切り分けるという考え方から生まれてきた言葉です。物事を考えたり感じたりするための精神と、外界との接触をする部分としての物質を考えたときに、生物の物質としての部分が『体』に相当しています。
また、生物を物質として捉えた全てを示すことから、ある特定の個人などを指し示すのにも使用することが可能です。また、「強い」「弱る」などの言葉と結びつくことによって、ある腕や足などの特定の部分の機能を指し示す場合もあります。物質としての”からだ”を包括的に示すのが元の意味ですが、その一部を指す可能性もあるのです。
『身体』
- 意味:人の頭や胴、手足などの肉体。主体の心や精神も含むことがある。
- 使い方:将来に備えて身体を鍛える。
『身体』は「人の頭や胴、手足などの肉体部分」を指すものですが、「心や精神も含む主体の全体」を指す意味もあるのが特徴です。
『体』とは異なる点として主体になるのが「人」に限られます。この理由となっているのが心や精神の意味合いを含んでいるからです。「身」という言葉にも『体』と同様の意味がありますが、身分や立場といった意味でも用いられるのが特徴となっていて、主体の内面を示すこともできます。その影響を受けて、主には物質としての”からだ”を示しているけれども、さらには”からだ”の内部をも示すことができるようになっているのです。
あえて『身体』と書く場合にはその含みがあると理解しておくと良いでしょう。元来、人は他の生物に比べて秀でていて精神を有していて考えることができるという思想があります。その影響を受けて人が主体になったときにしか使われないようになっていると言えるでしょう。
『体』と『身体』の使い分け例
『体』と『身体』を区別するには内面を見ているかどうかを判断すれば問題ありません。
「体の調子が良い」というときには頭も腰も手足も快調な状態にあって活動するのに支障がないという意味を示します。もともと足腰に不安があったというような場合には、その状態が改善されたという形で全体ではなく部分を示す意味であることもあるでしょう。これが「身体の調子が良い」となると心にも影響が広がります。ストレスなどを抱えていて鬱々とした状況があったものの、その気持ちも晴れた状況になったという意味が付加されるのです。
一方、「お体を大切になさって下さい」と「お身体を大切になさって下さい」にも意味の違いが生まれます。『体』を使うと怪我をしたり”からだ”のどこかに不調を抱えたりしないようにお気をつけ下さいという意味になりますが、『身体』になると心の健康についても慮っているというニュアンスが伝わるでしょう。そのため、相手に対して使用するときには『身体』の方が自然と『体』よりも丁寧な言葉になるのです。
まとめ
”からだ”を表記するための2つの方法には人の内面まで意味が及ぶかどうかに違いがあります。『体』の場合には物質としての”からだ”を指すのに対して、『身体』を使うと心や精神にまで範囲が広がると覚えておきましょう。