『主旨』と『趣旨』は、どちらも『しゅし』と読み、「この本のしゅしは…」などと同じような使われた方をするので、区別がつきにくいものです。
そこで今回は、『主旨』と『趣旨』に、具体的にどのような違いがあるのかを説明していきます。
『主旨』
- 意味:文章・話・考えなどの中心となる事柄主な意味
- 使い方:論文の主旨、判決文の主旨
主旨はもともと何かを伝えようとする文章などがあることが前提として使われます。そのうえで、『主』の字が表わす通り、その内容の中心となるものが何であるかを示します。
また、『主』であるために一つの事柄を指します。要点や主題と似たようなニュアンスで使われることもあり、書き手や話し手の、その文章に込めた理念や理想、書いた目的などに関わらない内容の場合に用います。
たとえば、国語のテストで、「文章の要旨をまとめ、主旨をとらえよ」という問題があった時には、その文章に表現されている内容だけから読み取ることが求められます。
話の主旨を伝えるなどといった場合は、考えや論、計画などが示された文の中から、何を一番に伝えたい事柄を抜き出すことになります。
『趣旨』
意味:活動や企画などのもとになる考えや理由趣意
使い方:計画の趣旨、会社設立の趣旨
趣旨には、行動や計画の目的を示す意味があり、何のための文章や話であるかを伝えたいという思いが込められています。
書き手や話し手がその文章に込めた理念や理想、書いた目的などを伝えることが重要となってきます。『趣』の意味にもある「言おうとしていること」というところが大きく関わってきます。
たとえば、国語のテストで、「文章の要旨をまとめ、趣旨をとらえよ」という問題があった場合、文章上に明確に表現されていないとしても、何のためにこの文章が書かれたのかを読み取らなくてはなりません。
趣旨には、伝えることでわかってもらいたい何かがあるというあるという意志があり、読み手や聞き手にも、方向性をとらえようと心を傾ける姿勢が求められることになります。
『主旨』と『趣旨』の使い分けの例
『主旨』と『趣旨』の使い分けは、書き手・話し手の目的意識をどのように関わらせるかによってに変わってくるものです。
論文の主旨を伝える論文の内容の中心となることを伝える(目的意識がない)
論文の趣旨を伝える何のために論文の内容を述べたのかを伝える(目的意識がある)
たとえば、科学論文なら、『主旨』は、研究や実験の内容の中で、もっとも重要な過程や成果についてを抜き出してまとめます。
それに対して『趣旨』は、なぜ研究や実験をしようと思ったのか、研究や実験の結果がどのように生かされると考えているか、あるいは論文を著わそうと思った理由や目的など、いろいろな視点からの「言いたいこと」についても言及することができます。
『主旨』がただ一つの事柄だけを指すのに対して、『趣旨』には多様性が認められ、使い方にも幅があるといえます。
まとめ
このように、『主旨』と『趣旨』には、本来違う使い方があり、書き分けることができるものです。
しかし、『趣旨』の方に「言おうとすることを伝える」という意味があることから、報道などの実際のシーンでも、あえて使い分けをせずに、どちらにも『趣旨』を使っているということがあります。
確かに、口頭で「話のしゅしはわかった」といわれた場合、「いいたいことはわかった」という意味に使いますが、どちらの漢字を当てても不自然にならず、記述する際には迷うところです。
そのような場合には、守備範囲の広い『趣旨』を使う方が間違いが少ないことから、そのような傾向になったようです。
『主旨』と『趣旨』、似たような言葉ですが、微妙な違いのポイントは理解できたでしょうか。これを機会に、それぞれの意味を把握しながら、上手に使い分けられるようにしていってください。