これで解決!『褒める』と『誉める』の意味の違いと使い分け例

意味の違い

人が優れていることをしているのを見るとそれをたたえることがあるでしょう。そのときに行っているのは『褒める』でしょうか、あるいは『誉める』でしょうか。この二つを区別するのはそれほど簡単ではありませんが、微妙な違いを理解しましょう。

『褒める』

  • 意味:物事や行為を優れていると評価してたたえる。
  • 使い方:子供がバスに静かに乗っているのを見て褒めてあげた。

『褒める』は「ある物事や人の行ったことを優れていると評価してたたえる」ことを表現する言葉です。

『誉める』とは同じ意味とされているため置き換えができますが、厳密には違う漢字を当てられていることから意味に違いがあります。

「褒」は良い行いに対して返すものという意味があることから、相手の行いが良いものだと評価して、それに対して形をもってたたえるという意味合いがあるのです。評価するという視点があるため、基本的には目上の人に対して用いるのは失礼になります。

また、「褒」には「衣」という「物」を示す意味があるのが特徴です。「褒章」などとして用いられるように、物を与えてほめるという意味を持つ場合にもともとは用いられていたということは留意しましょう。現在ではそこまで厳密な形で『褒める』という言葉が使用されているわけではありませんが、漢字から考えると深い意味があるのです。

『誉める』

  • 意味:物事や行為を優れているとしてたたえる。
  • 使い方:父親がついに病気を克服したと聞いて誉めた。

『誉める』は「ある物事や人の行為が優れていると考えて、良いと伝える」行為を示しています。

『褒める』と同義語とされているため、厳密に使い分ける必要がないのが事実です。特に『褒める』が常用漢字となっていることから、そちらに統一した方が良いという見解もあります。しかし、漢字の意味から考えればやはり『褒める』との違いがあるため、厳密に使い分けようとすれば可能です。

『誉』は「ほまれ」と読み、誰もが客観的に見て喜ばしいものという意味があります。ほめる対象となっている物事や行為が優れているという評価は前提として考えることができるのです。そのため、目上の人に対して使用することもできます

一方、『誉』には「言」が用いられていて、言葉によってたたえるという意味合いがある点も特徴です。必ずしも物品の授受を伴わないわけではありませんが、本来は誰もが優れていると評価して声を揃えてたたえるという意味があったと言えます。

『褒める』と『誉める』の使い分け系

『誉める』は『褒める』に置き換えてしまっても良いというのが現状の国語の教育として正しい考え方です。しかし、厳密に使い分けをすると一回り賢く「ほめる」を使えるようになるでしょう。

上司の行いを褒める」と表現してしまうことはできますが、目上の人に対して失礼になる可能性があります。そのため、「上司の行いを誉める」とした方が良いという考え方ができるでしょう。

一方、「このプロジェクトへの彼の貢献を褒めて賞状を与えた」と表現すると、上下関係についても「ほめる」方法についても問題がありません。ところが、「このプロジェクトへの彼の貢献を誉めて賞状を与えた」となってしまうと、厳密に言えば言葉でたたえるだけに留まるのが原義なので『誉める』にした方が正しいということになるのです。これを「このプロジェクトへの彼の貢献を誉めて労った」ということになると言葉をかけただけだろうと考えてもらうことができます。ただし、二つの言葉が同義にされてしまっているため、それ以上の労いがある可能性を完全には否定できない点には注意しましょう。

まとめ

『褒める』と『誉める』は現在では同義語になっています。厳密な違いとして『褒める』は物品を与えて目下の人をたたえるときに使用し、『誉める』は誰もが優れていると認めるものに対して言葉でたたえるときに用いると理解しておきましょう。