日常生活の中で交番を見ることは度々あります。最近では事件や事故の対応以外にも、近隣の住宅を訪問する活動を行っており、以前よりも身近な存在になりました。
普段は気にすることもありませんが、交番と派出所、駐在所の違いとは何なのでしょうか?意味の違いを詳しく説明します。
『交番』
- 意味:警察署の下部機構で、町の要所に設けられた警察官の詰所。名称変更前の派出所の通称。
- 使い方:交番所。移動交番。
交番とは、警察が市街地に設置している施設で、警察官の詰所のことを言います。通常は2~3人が一組で勤務しています。
日本の警察制度は明治時代初期に創設されました。
西暦1871年頃には、東京で警察官を採用し、警察署を中心にパトロールなどを行わせていましたが、巡査が数人で交代して立番にあたる、という勤務形態から、警察官の詰所に交番所と名前を付け、1874年頃から東京を皮切りに全国に設置しました。
世の中にこの呼び名が広まりましたが、1881年には派出所に改名され、こちらが正式名称になりました。その後親しみやすく、既に定着していることから、1994年には交番という呼び名を再び正式名称にしました。
全国には6000ヶ所以上存在し、地域課の警察官が現在も交代で勤務することで、地域住民の安全を守っています。
『派出所』
- 意味:派出された人が詰めて業務を行う所。交番の旧称。
- 使い方:派出所勤務。警備派出所。名称を変更したため交番と用法は同じ。
1994年まで交番の正式名称として使用されていた名称です。交番と同じ施設を指し、現在では一般の交番に対して派出所という呼び方はしませんが、国内の空港や大使館、各種の公邸などに警備派出所という警察官の詰所が設置されています。
東京都では皇居周辺や東京ドーム、日本銀行など、その数は数十ヶ所以上にのぼります。交番の出張所という意味合いから、臨時で設置されるものも存在し、夏山登山のシーズンには御殿場や河口湖、富士宮などに設置されます。
最近では、三重県の賢島に伊勢志摩サミットの警備を目的にした期間限定の警備派出所が作られました。通常の交番と同じように、管内で発生した事件の初動捜査や警護を任務とします。
事件や事故が多い場所に置かれることから、通常の交番よりも捜査にあたる頻度が高いことが特徴です。
『駐在所』
- 意味:派遣されて駐在する場所。警察署の下部機構で、巡査が駐在して区域内の警備や事務処理を行う所。
- 使い方:山奥の駐在所。住み込みで勤務する駐在所の巡査。
駐在所とは、交番と同じように警察官が勤務する施設ですが、原則として一人の警察官が勤務し、警察官とその家族が住む官舎を兼ねています。
家業のようなイメージがありますが、人事異動を基に配属される公務員です。勤務する警察官は地域警察活動に精通した警察官で、人口の少ない地域であることから住民との距離が非常に近いことが特徴です。
官舎を兼ねている目的には、基本的に治安が良いことから危険な業務は少なく、その反面で住民のサポートなどの業務が多いことから、配偶者に警察官の業務補助を担ってもらうことがあります。
地域に密着した警察官の存在は重要なものであり、地方や山間部以外にも駐在所は設置されています。1990年代後半から都市部にも設置する動きが出始め、都会のイメージがある東京23区内にも60ヶ所ほどの駐在所があります。
まとめ
- 交番:警察署の下部機構で、町の要所に設けられた警察官の詰所。名称変更前の派出所の通称。
- 派出所:派出された人が詰めて業務を行う所。交番の旧称。
- 駐在所:派遣されて駐在する場所。警察署の下部機構で、巡査が駐在して区域内の警備や事務処理を行う所。
交番、派出所、駐在所の違いについて述べてきましたが、全て同じ目的を持ったものです。移動交番なども含め、それぞれが近隣の方々の安全を守るために業務を行っています。
警察官は慢性的に人手不足の状態が続いており、夜間やパトロールに出ている間は無人になる交番が存在します。事件の被害を避けるために交番所に駆け込んだものの警察官がおらず被害を食い止めることができなかったケースがあり、空き交番として問題になっています。
この状況を解消するにはあと3万人の警察官が必要とされていますが、一つの交番の対象エリアを広げるなどして対応しています。
警察官の勤務形態や時代によって呼び方が異なります。特に駐在所は異なったものを指しますので注意しましょう。