同じ読み方でも意味が異なる漢字は文章のつながりからどれを使えばいいのかわからなくなるときがあるものです。”あらわす” という漢字には複数ありますが、その中から表すと現すと著す、この3つの違いについて調べてみました。
『表す』
- 意味 :なかったものを具体的に表面に出して示すこと
- 使い方:喜びを言葉に表す
表すは今までなかったものや見えなかったものなどがあらわれるという意味です。データや心、精神や考え、気持ちなどを表やグラフ、顔、音楽などによって示すことをさします。この場合、その場に相手がいる必要がなく、頭の中にあるアイデアなどを紙などに描くだけで、描いたものをさらに人に見せることによりその存在を示すという意味合いはありません。対語は潜める、秘めるです。
表現や表明、表示や表出、表白や表れるという使い方があります。表現するは示すと同じ方法や手段、音楽や絵画、造詣や舞踏などの芸術を通じて内面的主観的な何かをあらわすという意味で漢語的表現です。また、ひょうす・ひょうすると読むこともあり、敬意や謝意、祝意や哀悼、遺憾の意をひょうすなど気持ちを表すの文章語として使用します。表出するは感情の表出など心の中の考えや感情を外に出すという意味の漢語的表現です。
ほかにも、イライラした気持ちが表情や言葉に表れるなど、意志とは関係のない自然な事柄にも使われます。
『現す』
- 意味 :隠れて見えなかったもを見える状態にすること
- 使い方:馬脚を現す
現すは姿や正体、効果や頭角などをあらわす、持っている力を発揮するという意味です。人の目のつくところにでて、存在を明らかにするという意味合いも含まれています。効果が現れる、蜃気楼や風景、敵や姿、悪事が現れるなど自動詞としても使われる言葉です。
また、恐竜や救世主などを地上に出現したり、ネツトワークなどの新しい文化の発掘など、それまでに隠れていたものや認められていなかったものの存在がかたちとなってあらわれる場合に出現するという自動詞も使われます。
ほかにも、精神の錯乱状態や街の様相など、ある状態や様子をあらわす場合に現出するという自他動詞が使われ、漢語的表現の文章語です。発現や具現、再現や現象などの使い方があります。隠していたものが人に知られるようになる露顕するという意味では顕すを使うこともあります。
そして、著すは書物を書いて世に出すという意味です。たて続けに小説を著すというような使い方や著述・著作などがあります。思想や研究、成果や体験などを本にあらわすときに使います。
『表す』と『現す』の使い分け例
表すと現すを使い分けるとき、最初から存在していたものがでてくるのか、そうでないのか、あるいはそれらを示す際に相手が必要か否かというところで使い分けが可能です。
たとえば、全身で喜びを示したり、友愛を示すシンボルマーク、心の中にある気持ちを詩で表現する場合などには表すを使います。一方、建物の陰から出てくる、真価を示す、薬の効果を示す場合には現すを使用します。
しかし、例外的にどちらのあらわすでもいい場合があります。たとえば、数字にあらわれるという文章の場合、表でも現でもどちらを使うことも可能です。前後の文脈などからこの場合は判断することになりますが、意識的でなく自然にその数字を示したということであれば表れるを使い、努力した結果、数字にあらわれた場合には現れるを使用します。
無意識的にやっていたことが数ヵ月後数字になって表れた・ダイエットを始めて意識的に食事制限と運動をした結果、数字になって現れたというように使い分けます。そのため、効果をあらわすという表現でも無意識的な効果を示す場合には表すを使うこともあるのです。
まとめ
以上、今回は表す・現す・著すの使い分けについて紹介しました。
- 表す・・・なかったものを具体的に表面に出して示すこと
- 現す・・・隠れて見えなかったものを見える状態にすること
- 著す・・・書物をかいて世にだすこと
正しく意味を理解し、まちがった表現をしないよう正しい日本語を身につけることが大事です。