『削減』と『低減』、いずれも量が減ることに関係しているのはわかりますが、詳しい意味の違いを知らずに使っている人も少なくありません。
ここでは、混同しやすい二つの言葉について、どのような使い分けがあるのかを見ていきましょう。
『削減(さくげん)』
- 意味:(量・金額を)削って減らすこと。
- 使い方:予算削減、人員削減など
この言葉は、予算や排出ガス、会社の人員、倉庫に保管された品物など、一定の範囲内にあるものの中から一部分を切り取って取り除くことにより、量を減らすときに使われます。
そのため、範囲が定まっていないようなものに使われることはありませんし、自分の意思で減らすときに使用されるため、自然に減少していくようなときにも使われません。
また、減らすという行動そのものを指していますので、現時点ではまだその効果が出ておらず、減少していないという点にも注目しなければなりません。例えば、予算『削減』という言葉を使っている段階では、まだ予算の金額はそのままの状態です。
そしてそれを実行した結果、予算が予定通りに減った時は『削減』に成功したということになります。
『低減(ていげん)』
- 意味:減ること、減らすこと。または、値段が安くなること、安くすること。
- 使い方:希少動物の低減、原価の低減
『低減』というのは自分の意思で減らすのではなく、自然現象としてそれらが減っていく場合にも使われますので、文章を見て自然に減っているのか、意図的に減らしているのかを読み取っていく必要があります。
例えば、ある絶滅危惧種が『低減』しているという使い方の場合には、人間が保護すべく努力しているにもかかわらず数が減っていることになりますので、自然に減っていることになります。
一方、商品の値段などの『低減』を目指すという場合には、意識的に関係者が値段を下げていることになりますので、人為的な行動であることがわかります。
なお、この言葉も『削減』と同じで、やはり現状では数がそのままであり、人為的に、あるいは自然に減少する結果が近い将来に訪れるという意味で使われています。
『削減』と『低減』の使い分けの例
- 支出項目の削減・・・予算などで、支出に関する部分を削って総額を減らすこと
- 支出項目の低減・・・実際に支出の金額が安くなったこと
このように、『削減』と『低減』は使い方が若干異なってきます。
予算に関していうと、予算を『削減』するという場合には、意識して予算で決められたいくつかの項目において、見直しをして予算を下げるということになります。
一方、『低減』は意図して下げる意味合いの時もありますが、自然に減少したという読み方もできます。
- 出生率の削減・・・政策などで子供の人数を意図的に制限する
- 出生率の低減・・・様々な事情から、自然に子供の数が減少する
高齢化社会の現代においては、『削減』により出生率を減少させることはありませんので、一般的には期待していた方向とは異なり、自然に減少した『低減』を使うことが多いです。
まとめ
いかがでしょうか。『低減』にも『削減』と同じような使い方ができますので、上手に使い分けるのは難しいこともあります。
- 削減・・・意識的に一部を切り取ったり削ったりして減らすこと
- 低減・・・数や値段を減らしたり、自然に減っていくこと
このように分類しておくと、ある程度使いやすくなるのではないでしょうか。
『削減』という言葉は意識して行うときに使われることもあり、ある程度用途が限られていますので、自然に減る場合には『低減』を積極的に使った方が良いでしょう。
また、負担や痛みなどのマイナスの意味合いのあるものを減らす場合には、重さを軽くするという意味で『軽減』という言葉を使うことが多いです。
いずれも減の字が入っていることで明確に分けるのが難しいと思われるでしょうが、それぞれにきちんとした意味がありますので上手に使いましょう。