『ランク』と『レベル』は、どちらも他者と比較する過程で使われる言葉ですが、正確な違いを説明するとなると、ちょっと考え込んでしまうかもしれませんね。この二つの言葉には、意味はもちろんですが、使われる前提にも明確な違いがあるのです。
『ランク』
- 意味 :順位。階級。順位をつけること。
- 使い方:試験の成績で生徒をランクづけする、など。
『ランク』は、「1.2.3……といった数字で表せる明確な順位、もしくは順位のついた状態」を意味します。同じ意味で、『ランキング』という言葉もよく使われます。
オリンピックなどでは、熾烈な競争の果てに勝敗が決まり、その結果として選手たちははっきりと順位をつけられるわけですが、そこまであからさまなスポーツ界でなくても、学校や会社で他人と比較されて順位をつけられるという状況は、現代社会ではごく自然に起こります。
そのため使用頻度の高い言葉ではあるのですが、気をつけなければならない点が二つあります。まずこの言葉を使う前提として、明確な枠の中で順番をつける組織や団体、それに競争相手が存在するということです。漠然と社会全体とか、世間一般といった範囲内で順位をつけることはできないからです。
次に、ある一定の枠の中で厳密に比較される以上、原則として同じ順位は存在しません。基本的に、「私とあの人とは同じランクだ」という使い方はしないということですね。
『レベル』
- 意味 :程度。水準。
- 使い方:あの人は実力がトップレベルだ、など。
こちらもまた、他者と比較した結果を言い表す言葉ですが、『ランク』のように明確な順位を表すものではなく、優劣をつける上での「だいたいこの程度」という大雑把な範囲を表します。これは「生活のレベル」という使い方からもわかるように、数値で計って決めるというよりは見た目で判断した大まかな状態を表しています。
さらに優劣を決めるのに「この中で」という限定的な枠づけはなく「今の社会で」とか、少なくとも「国内で」といった前提でどのあたりの範囲にあるかを言い表す場合に使われるため、大雑把ではあるが常識的かつ客観的な判断に基づいているということができます。そういった水準は、おもに大多数の一般的な人たちが見たり聞いたりした結果の印象で大まかに決まるものなのでしょう。
したがって『ランク』の場合と違い、同じ水準の人は大勢いることになります。「あの二人は仕事では同レベルのスキルを持っている」という使い方も、よく耳にするところです。
『ランク』と『レベル』の使い分け例
『ランク』と『レベル』の違いが分かったら、それぞれがどのように使われるのか、実際に例文を読んで確認してみましょう。使用例を比べてみたほうが、わかりやすい場合もありますね。
- ランクが高い=順位が高い。
- レベルが高い=水準が高い。
『ランクが高い』は、「今度の実力テストでは、彼のほうがランクが高かった」のように、明確な数値をもとにした順位の決められた状態を表しています。『レベルが高い』は、「レベルの高い試合が行われた」のように、目で見た感覚としての高い水準を表し、必ずしも数値に基づいているわけではありません。
また、『ランク』と『レベル』の使い方の違いとしては、例えば「彼女の演奏は、コンクールに出場するレベルには達していない」と、いうことはできますが、「ランクには達していない」という使い方はできません。『ランク』はあくまで一定の集団の中で決められた順位であり、仮にその集団の水準自体が低かったとすると、ランクが高かろうがコンクールに出場するレベルに達していない状況もありうるからです。
まとめ
以上、『ランク』と『レベル』の意味の違いと使い分け方は、理解していただけたでしょうか?
- ランク=数字で表せる明確な順位。
- レベル=見聞きした印象で大雑把に判断できる水準
よく口にする割に、使い分けには注意が必要な『ランク』と『レベル』。これを機会に、明確に区別をしておきましょう。