『探す』『捜す』はどちらも”さがす”というときに使われる言葉ですが、うまく使い分けができるでしょうか。同じように使えそうなことばでありながらもニュアンスに違いがあるため、明確に区別することが大切です。
『探す』
- 意味:存在するかどうかわからないものを見つけ出そうとすること
- 使い方:ゴミの山から宝物を探す。
『探す』は「もともとあるかどうかわからないものを見つけ出そうとすること」です。存在するかどうかわからない未知のものを見つけ出したり、ここにあるかどうかはわからないものをあると信じて見つけようと努力したりすることを示します。
対象がものになりやすいのも特徴となる点で、図書館で本を探したり、忘れものを探したりするというときに使用する表現です。必ずしもものに限らず、人のあら探しをするという表現のように具体的な形のないものを対象として使用することもできます。
惑星の探査、迷宮の探索といった形で何か新しい発見があるのではないかと考えて未知の場所を既知にするために調べるという意味でも使用可能です。しばしば『捜す』と同じような意味でも用いられてしまう場合がありますが、厳密には見つけ出そうとする対象そのものが未知であることを前提に置いているのが『探す』の特徴と理解しておくと良いでしょう。
『捜す』
- 意味:存在することがわかっているものを見つけ出そうとすること。
- 使い方:いなくなってしまった友人を捜す。
『捜す』は「その対象があるという前提のもとに見つけ出そうとすること」を意味します。存在そのものはあるとわかっていて、その所在を明らかにしたり、内容についてより詳細に調べたりする行為です。
行方不明になってしまった人は存在していることは前提ですが、どこにいるかがわかりません。このようなときに行方不明者を見つけるのに使用する表現となります。事件の捜査といった形でも用いられるのが特徴です。この場合には事件自体は既に存在していて、より詳細についての調査を行って内容を明確にしていくことが目指されます。
犯人の捜索という表現もよく用いられますが、犯人という犯罪行為を行ってしまった人は既知になっていて、その所在や身元などを調べていくことを示す表現です。このように対象が既知のものになっていて、その詳細について情報を得るために行動を起こすのが『捜す』行為の基本的な考え方になります。
『探す』と『捜す』の使い分け例
『探す』と『捜す』を区別するのにわかりやすいのが財布を見つけ出そうとするときの表現です。
「財布を探す」の場合には、これから財布を新調するために、自分の目的に合った財布をお店で見つけ出そうとする行為になります。これに対して「財布を捜す」ときには、持っていたはずの財布を失くしてしまって、どこにあるのかを見つけ出すということになるのです。
また、同様のことが「恋人を探す」と「恋人を捜す」についても言えるでしょう。まだ恋人がいなくて、彼氏や彼女を作るために出会いを求めるのが「恋人を探す」です。これに対して、もう既に彼氏や彼女がいるけれど、デートをしていてはぐれてしまったり、いつの間にか連絡が途絶えてしまったりして見つけ出さなければならなくなったら「恋人を捜す」ことになります。
このように見つけ出そうとする対象が未知のものか、既知のものかによって『探す』と『捜す』を使い分けるのが基本です。熟語として「探査」と「捜査」の組み合わせも覚えておくと両者の区別がつきやすくなるでしょう。
まとめ
『探す』と『捜す』は同じようでありながら見つけ出そうとしているものに違いがあります。
- 探す・・・未知のものを見つけ出す
- 捜す・・・既知のものを見つけ出したり、より深く調べたりする
このように区別しておくとはっきりと使い分けができるでしょう。